【シルクとわたし】第二章 長く愛されれるもの ビューティーライター&エディター 横溝なおこ
「バズる」という言葉が、どうも苦手です。
わりと長い間デジタル媒体の編集に携わってきた身でありながら、それもどうかと思いますが(笑)。
WEBの世界では、瞬時に多くの人の目に触れ、話題となることが重視されます。一瞬の熱狂が過ぎ去るとまた次の話題を追いかける、その繰り返し。もちろん、スピード感と拡散力がデジタルの魅力であり、面白さであり、醍醐味でもあるわけですが。でも、マッハの速さで移り変わる瞬間的な興味が、人の心にどれだけ深く響いているのかなぁ? 響いているといいなぁ……。そんなことを考える時間が増えたおかげで、逆に「バズ」に翻弄されずに長く愛されるものをもっと大切にしたい、という思いが強くなりました。
また、年齢を重ねたことで、自分自身のライフスタイルや服の好みも変化してきました。若い頃はワンシーズンで飽きてしまうような流行りの服を追いかけるのも楽しかったのですが、最近はベーシックなスタイルに回帰。先日、重い腰を上げて大規模な断捨離をしたのですが、クローゼットに残った服の多くは質の良いシルク素材のものでした。その中でも現役選手として最も活躍してくれているのは、10年以上前に購入したクロエのフォレストグリーンのトップス。シルク独特の柔らかな肌触りと控えめで上品な光沢が、少しドキドキしながら購入した当時の思い出と共に、今も変わらず私の心をときめかせてくれます。
その価値観は化粧品にも通じます。特にスキンケアは、肌と真摯に向き合い、良質な成分を使って丁寧なものづくりをしているブランドを選ぶように心がけています。そんな今の自分にぴったりハマったのが、『Itoguchi』です。
『Itoguchi』のメインの成分は、みどりまゆを原料とするシルク成分。みどりまゆは絹糸用に使われる白まゆと比べてシルク成分の含有量が多く、より高いスキンケア効果が期待できるそう。しかも、高品質のみどりまゆは生産が難しく希少性が高いため、なんと自社内に大型の無菌工場を完備してしまったというこだわりっぷり。養蚕からシルク成分の抽出まで自社で一貫して行うため、製品にもたっぷりのシルク成分を入れられるとのこと。
ちなみに、純度の高いみどりまゆを育てるために重要なことの一つが、蚕の餌だそう。先日工場見学にうかがったのですが、餌のレシピは社外秘とのことで、絶対に見せていただけませんでした。無菌蚕様が何を召し上がって育つのか、気になります(笑)。
実際に『Itoguchi』のスキンケアを初めて試した時に一番印象に残ったのは、肌への馴染みの良さと、刺激を感じないということ。化粧品の説明をする際、よく「肌にスーッと吸い込まれていくような」と表現することがありますが、『Itoguchi』の場合は、体感できる親和性の高さが驚異的なのです。「吸い込まれていくような」というよりは、「そもそも私の肌の潤い成分の一部でしたか!?」と錯覚するかような感覚(個人の感想です)。
先日、ハワイに行ってきたばかりなのですが、現地に持っていってよかったスキンケアNo.1が『Itoguchi』の「みどりまゆ モイストローション」です。あちらでは炎天下で連日サーフィンをしていたので、当然顔も脚もかなり紫外線を浴びまくり、赤黒く熱を持った状態に。そんな肌にも全くしみることなく、素早く潤い補給をしてツルツルもっちりに整えてくれました。おかげで大きなトラブルが発生することもなく、大感謝。
ところで、『Itoguchi』を製造、販売する『きものブレイン』は、もともと着物のトータルケアを専門とする企業。扱いの難しいシルクの着物の修正、丸洗い、撥水加工などを行っています。汚れたり、サイズが合わなくなったりした着物も美しく蘇らせ、タンスに眠らせない。そんな事業内容にも共感します。
流行を追いかけるだけでなく、日常に馴染み、長く寄り添えるものを選びたい。クロエのシルクシャツが10年以上私のワードローブのスタメンであり続けているように、『Itoguchi』のスキンケアもきっと、これから先の肌を支えてくれる存在になると思っています。
横溝なおこ
ビューティーエディター&ライター
大学卒業後、保険会社勤務を経てフリーライターに。マガジンハウス「GINZA」をはじめ主にファッション誌のビューティーページを担当し、2017年より集英社「SPUR.JP」にエディターとして参加。
ビューティーディレクターを務めたのち、2024年から再びフリーランスに。ビューティーをファッションやライフスタイルの一部ととらえた視点で、雑誌やWEBでの企画・編集・執筆、イベントやトークショーへの出演、カタログや販促用ツールの制作など幅広く活動中。