“精油” について
みなさまは“精油”という言葉から何を思い浮かべますか?
精油とアロマどう違うの?たくさんあって選ぶのが難しい…などとっつきにくい印象を受ける方が多いと思います。
”精油”は今やアロマテラピーだけでなく、様々な化粧品やヘアケア製品に使われており、私たちの生活に身近なものになっています。
こちらのコラムでは“精油”や使用方法、精油にまつわる情報について分かりやすく、みなさまの日々のケアに役立つようなコラムを書いてまいります。
INDEX
1.精油とは?
2.精油の歴史をたどって
3.精油はどうやって抽出するの?
4.精油はどうやって脳やからだに伝わるの?
5.精油を使用する際の注意点は?
6. まとめ
1.精油とは?
英語では、エッセンシャルオイルと呼ばれ、植物の花や葉、果皮、樹皮、根、種子、樹脂から採れ、有効成分を持つ天然100%の揮発性の有機化合物になります。”アロマ”という言葉をよく聞かれると思いますが、アロマは香りの総称で、合成香料も含みますが、精油は100%天然のものを指します。
1500種類もの精油があると言われていますが、香料で使用する精油は100種類、アロマテラピーで通常使用する精油は約40~50種類になります。
2.精油の歴史をたどって
①古代エジプト文明における精油の歴史紀元前3,000年前の古代エジプトでは、儀式で香りをたきしめる薫香(くんこう)やミイラの保存のために、乳香(フランキンセンス)や没薬(ミルラ)を使用していました。
後に聖書において「東の国の博士たちが、贈り物のとして“黄金・乳香・没薬”を捧げた」と記述があるように、金と同様の価値があったとは驚きです。乳香も没薬も化粧品やアロマテラピーなどで現在も使用しているものになります。
「乳香(フランキンセンス)」
②ギリシア文明における精油の歴史
ギリシア文明においては、紀元前4,500年前において、精油の使用を開始しました。哲学者ヒポクラテス(紀元前460頃〜375頃)が300種類の精油を記したものを残しています。特にアロマテラピーで使用するフェンネル、クミン、カルダモンなどが有名です。
③インド、中国における精油の歴史
紀元前5000年前からインドではハーブ療法である“アユールヴェーダ”(生命科学)が盛んで、現在でも主流の健康法になっています。一方、中国では紀元前2700年頃、黄帝は「黄帝内経」と呼ばれる365種類の植物についての詳しい解説とそれらを使った療法を記しました。中国では柑橘系の植物が主で、その後ヨーロッパへ伝わって行きます。日本でおなじみの“ゆず”も原産は中国になります。
④水蒸気蒸留法の発明
11世紀にはペルシア人イヴィン・スィーナーにより現在の水蒸気蒸留法が発明されます。精油の抽出がより身近になり、水蒸気蒸留機とともにヨーロッパに広がって行きます。
⑤アロマテラピーはフランスから始まった・・・
20世紀に入ると、フランスの化学者ガット・フォセが実験中にやけどを負い、そばにあったラベンダー精油を傷口に直接塗ったところ、みるみるうちに回復したというエピソードをもとに1937年“アロマテラピー”(aromathérapie)を執筆しました。
これがアロマ(aroma)+テラピー(thérapie)の起源となり、フランスにおけるアロマテラピーの誕生となります。
⑥イギリスでのアロマテラピーと日本での広まり
1960年代~1980年代にかけて、健康を全体的に捉える“ホリスティック医療”として精油を使用したアロマトリートメント(マッサージ)がイギリスで発展し、1977年、ロバート・ティスランドが“The Art of Aromatherapy”(アロマテラピーの理論と実際)を出版、イギリスでアロマテラピーが広まりました。
1985年にはロバート・ティスランドの著書“The Art of Aromatherapy”(アロマテラピーの理論と実際)が日本に紹介され、芳香浴やアロマトリートメントといったイギリス式のアロマテラピーが広まり、現在日本におけるアロマテラピーの主流となっています。
3.精油はどうやって抽出するの?
精油の抽出法には、水蒸気蒸留法、圧搾法、溶媒抽出/浸出法などがあります。① 水蒸気蒸留法
花や葉、樹皮、種子などをガラス瓶に入れて、下から熱を加えて採れる蒸気を冷却した後、精油と芳香蒸留水(フローラルウォーター)に分かれる方法になります。
メリット:柑橘系の精油の一部に含まれ日光に当たるとシミや炎症を起こし、光毒性のある“フロクマリン”を含まない精油を抽出することができます。
デメリット:熱を加えるため、わずかに香り成分が変わってしまいます。
② 圧搾法
柑橘系の果実の皮をむき精油を抽出する方法になります。
メリット:熱を加えないため、本来の香りそのものを抽出できます。
デメリット:柑橘系の精油の一部に含まれ日光に当たるとシミや炎症を起こし、光毒性のある“フロクマリン”を含んでしまいます。マッサージオイルなどでお肌に使用した際には、日に当たらないようにしましょう。また、安心してお使いいただくためにフロクマリンフリー(FCF)の精油をご使用いただくことをおすすめします。
③ 溶媒抽出/浸出法
ローズ、ジャスミンなど繊細な花を抽出するために使用する抽出法になります。化学溶剤により精油を採る方法で、抽出されたものを“アブソリュート”とよびます。精油に溶剤がわずかに残るため、アロマトリートメント(マッサージ)にご使用時にはご注意ください。
4.精油はどうやって脳やからだに伝わるの?
精油の脳やからだへの伝わり方としては、芳香浴、経皮吸収、吸入法、沐浴法などがあります。
① 芳香浴・・鼻から入った香り分子は、肺を通り、血管に入り毛細血管を通ってその効果を発揮します。また、鼻から入った香り分子は前頭葉にある大脳辺縁系の記憶をつかさどる海馬(かいば)で直接香りの情報を受け取り、「好き」「嫌い」などの感情が動いた後、内分泌系、自律神経系に働きます。
●使用法:アロマディフューザー、アロマストーンに数滴、またティッシュに数滴垂らして鼻から香りを吸収する方法になります。ティッシュでの使用はどこでも気軽に楽しめるのでおすすめです。
② 経皮吸収・・香り分子が皮膚を通して血管から毛細血管を通して血液中に入り効果を発揮する方法。
●使用法:アロマトリートメント(アロママッサージ)時に、ホホバオイルや椿オイルなどキャリアオイルに1%を目安に希釈し使用、またお風呂でバスソルトに数滴垂らして使用します。皮膚から吸収する方法になります。
③吸入法
鼻や、口から精油の香り分子を吸収し、呼吸器で精油の効果を得る方法。
●使用法:洗面器やマグカップにお湯をはって精油を数滴垂らし、ゆっくり深く呼吸して吸入する方法になります。ぜんそくやのどの痛みを和らげ、風邪予防にもおすすめです。
④ 沐浴法
バスタイムや足浴、手浴での使用法となります。
●使用法:お風呂にバスソルトやホホバオイルなどのキャリアオイルに数滴垂らしたものを使用します。全身浴は3~5滴、手浴、足浴は1~3滴が目安になります。精油は水やお湯に溶けませんので、必ずバスソルトなどに混ぜてご使用ください。
5. 精油を使用する際の注意点は?
① 直接肌につけないようにしてください。万が一ついてしまったらすぐに洗い流してください。② 飲用はお控えください。
③ ペットや乳幼児の手の届かないところに保管ください。
④ 乳幼児には芳香浴以外は使用しないでください。また、妊娠中の方や高齢者の方はご使用時には精油の種類や使用量にご注意ください。
⑤ アロマトリートメント(マッサージ)などで精油を使用する場合は、ベースオイルに1%を目安に希釈し、腕の内側の柔らかいところに10円玉大を塗り、24~48時間放置して肌に合うかどうかを試す“パッチテスト”をおすすめします。
⑥ 精油は合成のアロマオイルとは異なりますので、ご自身でご購入の場合はご確認ください。
6 .まとめ
精油は、有効成分を持つ天然100%の揮発性の有機化合物になります。脳、肌、からだに作用し、通常アロマテラピーでは約40~50種類を使用します。主な使用方法はアロマディフューザーなどを使用しての芳香浴、希釈してアロマトリートメント(アロママッサージ)に使用します。
ご使用の際には、肌に直接つけない、また乳幼児や妊娠中の方、高齢者の方への使用はくれぐれもご注意ください。
日本において精油は雑貨扱いですので気軽に購入できます。ぜひ日頃のケアに取り入れてみてください。
次回より精油について種類や特徴、使い方を書いていきますので、お楽しみに!