• Home
  • JOURNAL
  • 第1回「紫外線に対してはどうなんでしょう?」

第1回「紫外線に対してはどうなんでしょう?」

*INDEX*

Ⅰ.シルクと紫外線について
Ⅱ.原料であるシルクって、紫外線を防ぐの?
Ⅲ.やはりシルクって素晴らしい! ですが…
Ⅳ.原料と化粧品の効果は、また別物

 

 暑かった夏も過ぎ、涼しい秋が来たと思いきや、私たちが住む十日町市は朝晩の冷え込みが厳しくなり暖房をつける日も多くなってきました。そろそろ雪対策もしなければ、などと思っております。そんな中、少々時期外れかもしれませんが、今回はシルクと紫外線の関係についてお話したいと思います。

 

 

Ⅰ.シルクと紫外線について

 繊維であれ、化粧品であれ、“ シルクは紫外線を防ぐ ” とよく耳にしませんか? 実際のところはどうなのでしょうか。

 合成繊維の場合は、生地の上から紫外線カット材を後加工したり、繊維そのものに特殊な成分を練り込んで紫外線の透過を防いだり、糸の形状によって紫外線を乱反射させて防いだり、日進月歩でさまざまな衣類が世に出ています。

 一方、シルクはタンパク質でできており、シルク素材の衣類を着ていると、お肌に届く前に紫外線を吸収してくれることがさまざまな研究で報告されています。

 当社はきもの業界にいるため、長年シルクの良さを研究してきました。ですが、“繊維”ではなく、“生地”としてのシルクが持つ紫外線カット効果というのは、結局のところ “その生地によりけり” だと思っています。繊維としてのシルクが紫外線吸収をすることは確かですが、紗や絽と呼ばれる薄い透け感のある生地や、隙間だらけの織り方の生地は、ファッションとしてはとても魅力的ですが、必ずしもカット率が高いとは言えません。衣類に紫外線カットを期待するのであれば、厚みがあり隙間のない織り方、薄い色よりは濃い色の方が効果は高いようです。

 色はともかく、夏に厚めの生地の衣類は少々つらいですね。そうなると、やはり日焼け止め化粧品の出番です。 “日焼け止め” と標ぼうするには、実際に人間の肌でSPFPAを測定することが必須となりますが、今回は原料としてのシルクはどうなの?というところを掘り下げていきたいと思います。

 

 

Ⅱ.原料であるシルクって、紫外線を防ぐの?

 絹生活研究所では、自社の無菌室で生産した “みどりまゆ” というシルクから抽出した、加水分解セリシンと加水分解フィブロインという2種類のシルク原料を使用しています。加水分解フィブロインは皆さんがご存知の絹糸になるタンパク質を液体にした原料です。加水分解セリシンはフィブロインの周りを包んでいるタンパク質を液体にした原料です。どちらも肌と非常によく似た性質を持ち、美容成分として活用されています。

[画像提供:東京農業大学 長島孝行]


  セリシンは水に溶けやすく、一方フィブロインは水に溶けにくい性質のため、当社では全製品にセリシンを配合していますが、フィブロインは乳液やクリームを中心に配合しています。

さて、液体になったシルクとも表現できる、加水分解セリシンと加水分解フィブロインは、どのぐらい紫外線をカットするのでしょうか?実際に測定してきました。その結果がこのグラフです。

青い線が加水分解セリシン、オレンジの線が加水分解フィブロインです。それぞれ、紫外線A波(緑色の部分)と紫外線B波(オレンジ色の部分)の波長をあて、何%ぐらい透過するのかを調べました。

その結果、加水分解セリシンはA波もB波もほぼ100%カットしています(厳密には9799.999…%)。加水分解フィブロインは8794%ぐらいです。なかなかの好成績。

 


Ⅲ.やはりシルクって素晴らしい! ですが…

 これはあくまでも当社が生産したみどりまゆシルクにのみ当てはまるものです。他の品種、特に白繭ではここまでの結果は出せないはずです。なぜなら、みどりまゆは白繭よりも野生に近く、セリシンの中にフラボノイドという抗酸化物質を含んでいるからです。フラボノイドは緑色の色素でもあるため、みどりまゆは淡い黄緑色をしています。

 白繭は繊維としての理想である純白の色を求めて品種改良されてきたため、紫外線B波はカットできるけれど、A波には弱いことがわかっています。このグラフを見ながら、フラボノイドを含むセリシンと、絹糸部分であるフィブロインの差について、なんとなく納得がいったものです。

 

 

Ⅳ.原料と化粧品の効果は、また別物

 ここまでみどりまゆシルクから抽出した原料の紫外線カット効果を説明してきましたが、これはあくまでも原料のお話です。化粧品として紫外線カットを表示するには、前述した通り、必ず人間のお肌に塗ってSPFPAを測定することが必要です。加水分解セリシンと加水分解フィブロインが原料として優秀だと頭で理解していても、そのまま塗るにはためらいが…。塗りにくいですし、良い香りもしませんし。

 絹生活研究所が日焼け止めとして販売している商品は、ミルクローションだったりスプレーだったり、塗りやすい工夫と、そして控えめながら良い香りがしますので、ぜひお試しくださいね。

 

 

一覧へ戻る