【シルクとわたし】第八章 わたしはシルクと旅をする  エディター・ライター 小川由紀子

「色々なところを旅してるよね」とよく言われます。
世の中に数多いるジェットセッターに比べたらさほどでもないのですが、英語もろくに話せないわりには一人で無謀に旅をしている方かもしれません。おかげさまで“旅に持っていくコスメ”などの取材を受ける機会も多く、このジャーナルを寄稿させていただくことになったのも、わたしが「Itoguchi」のプロダクトを何度も紹介していたのがきっかけでした。

月並みな表現で改めて言葉にするのはなかなか恥ずかしいのですが、わたしの理想は“暮らすように旅をする”こと。ランドマークを足繁く巡ろうという気概はあまりなく、行き当たりばったりでカフェに入ったり、気ままに買い物をしたり、現地の友達と合流してそこからさらに他の国に出かけたり。
その土地の空気に溶け込んでいつもの休日のように過ごすのが好きなのです。(めまぐるしい現実から逃避するかのごとく旅に出て、出発前にリサーチする余裕がないからというのもありますが……苦笑)

そんな旅を幾度もくり返すうちに、わたしの理想の妨げとなるにっくき存在をはっきりと自覚しました。
それは “旅先での肌荒れ” 。

元来ほとんどゆらぐことのない丈夫な肌質ではあるのですが、日本の約7倍(!)とも言われるニュージーランドの苛烈な紫外線に晒されたとき、アイスランドで吹き荒ぶ風に巻かれ続けたときなどは、
流石に肌が悲鳴をあげてダイレクトにダメージを受けているのを痛感しました。
これには誰しも心当たりがあるかと思いますが、そうしてひとたび肌が荒れてしまうと、いくら雄大な景色を目にしても、初めて目にする食べ物を口にしても、“今、肌が荒れている”という事実に心のどこかで苛まされてしまうのです。(写真を撮る瞬間なんぞは特に!)

これは暮らすように旅をするうえで、とんでもないノイズであると。
どうにかせねばならないと試行錯誤を繰り返し、たどり着いたのが「Itoguchi」のスキンケアでした。

正直なところ、初めは人から勧められて「なんとなく、肌にやさしそう」くらいの軽い気持ちでスーツケースに詰め込んだのですが、これが大正解。

そのときは極寒のヨーロッパを周遊する肌にとっては過酷なトリップだったのですが、硬い水でざぶざぶ顔を洗おうとも、乾ききった外気の中を朝から晩まで歩こうとも、日本から連れてきたシルクの恵みのおかげか、俄然肌のうるおいを保てている感覚がありました。それ以来「みどりまゆ」のローションとクリームはわたしの旅のスタメンに。
もちろん行く先によってさまざまなスキンケアを持っていくのですが、文字どおり基礎化粧品としてこの2品を必ず使うことで、うるおいが定着しやすく、他のプロダクトのなじみもよくなって、荒れにくい肌のベースがつくれるのです。

近場のアジア圏や1週間以内の旅であれば上のトラベルセットでも十分ではありますが、「これさえあれば!」という安心感ゆえに、わたしは現品を丸ごと持っていくこともしばしば。そしてこのジャーナルでもすでに多くの方がご紹介されている、「みどりまゆ」の全身シャンプーとUVスプレーも欠かせないマストアイテム。

シャンプーに関してはこれ一本で髪も体も洗えるという点、その後のヘアトリートメントが不要である点も荷物を減らしたい旅にベスト。そしてなにより、オールインワンに期待するクオリティを遥かに超えた、しっとりとなめらかな洗い上がりにただただ驚き。
ドイツで「BAUHAUS」の学生寮だった建物に泊まったとき、共用のシャワーを使うのが地味に怖くて(防犯面でもオバケ面でも)このシャンプーを使って猛スピードで全身を洗うことができたのにもとても救われました。こちらは流石にミニボトルに移し替えて預け入れの荷物の中へ。

ノンケミカル処方のUVスプレーはベタつきや人工的なニオイがなく、シンプルに使いやすさ満点。

アレルギー性鼻炎でよく鼻をかんでいるせいか、鼻の頭だけが日焼けしやすいので(涙)陽射しの強い場所に行くときは鼻から顔全体に、さらにボディや髪の毛にもこまめに吹きつけるようにしています。

そうしてすっかり「Itoguchi」が旅のバディとなった頃に舞い込んだ、新潟・十日町市にある「きものブレイン」本社へのプレスツアーのお誘い。

「たとえ仕事でも、旅は旅!」と、合間に観光したり美味しいものを食べたいとひそかに目論んでいたのですが、そんな強欲なわたしを思いがけず虜にしたのが工場見学、正確にいえば「Itoguchi」の化粧品にふんだんに使われているシルクの原料である、蚕の育成過程を見せていただいたことでした。

そもそもわたしが旅好きになったのは、小さな頃に本で読んだ知らない場所の風景や生活への憧れから。

古城を冒険したり、ヤギの乳を搾ってチーズにしたり……。それらを実際にこの目で見たい、知りたい、体感したいという想いがいつも沸々としていて、その憧れのひとつに“お蚕さま”がありました。

糸を吐いて繭をつくる虫、そこからとれる世にも美しい絹。わからないなりにもそれがすごく神聖なものに感じて幼心をときめかせていた、その答え合わせが期せずしてこの十日町への旅となったのです。

工場の方のお話からひしひしと伝わってきたのは、“お蚕さま”が此処の人々にとっていかに宝物のような存在であるかということ。大学との連携の末にたどり着いた世界でも類を見ない無菌環境で生産され、

不純物を含まないゆえに防腐剤や保存料を入れる必要のない繭。特製レシピ(社外秘!)でつくられた、お蚕さまにとって格別のごはん。肌に存在する天然保湿因子・NMFとよく似たセリシンを豊富に含むよう研究に研究を重ね、その証とも言える、白繭にはない美しい黄みどり色……。

わたしが無自覚にその恩恵を受けていたスキンケアは、大切に育まれてきたお蚕さまの恵みそのもの。

「虫なのに、なんで“さま”って呼ばれるの?」と、子供の頃に抱いていた疑問がすっかり晴れた気がして。そして数あるシルク配合のスキンケアの中でも「Itoguchi」のそれだからこそ、どんな旅の肌環境にも寄り添ってくれてしなやかに乗り超えてこられたのだと。色々なことが一気に腑に落ちて、帰ってからもいただいたパンフレットの一文を感慨深く読み返していたのでした。

「みどりまゆ」から生まれる特別なシルクに込められたつくりての方の想いやこだわり、情熱を知って、バディへの愛着もますます深まった今日この頃。

また次の旅に出るためにも、まずはコンディションを整えて日々を一生懸命生きねば……!と、最近使い始めたヘアミルクにひそかな誓いを立てています。

 

 

小川由紀子
エディター・ライター

大学時代に美容エディター・木更容子氏に師事し、卒業後22歳でフリーランスに。
そこから20年、ビューティジャンルを中心に、雑誌や広告のビジュアルディレクション、コピーライティング、リリース制作、デザイン監修などを幅広く手がける。“美容に詳しくない人にも刺さる”おしゃれでわかりやすい発信を得意とし、ファッションやインテリア、花や旅に関連するコンテンツ制作も。無類の甘党。

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