【シルクとわたし】第四章 Touched by its touch . 肌触りの良いものに包まれる幸せ ビューティエディター/ライター 中尾のぞみ
あまり誰にも言ったことがないけれど、触り心地の良いものを触るのが大好き。自分ではちょっとだけフェチ入ってる…?と思うほど。日々の猥雑さに紛れて忘れかけることも多いけれど、ふと、手触りが心地良いものに触れると、ものすごい多幸感を感じる。だって、触り心地が良いときに、悪いことはほぼないと思うから。触り心地が良いということはなめらかだったり柔らかだったりすべやかだったり、その表面がきちんと整っている証拠。ならば、見た目だって美しいはずなのだ。もっと言うと、魂が人間として生まれてくる目的のひとつは、実体として何かに“触れる”“触れ合う”ためだと信じているほど、触ること自体が大切だと思っているから、その触り心地が良いことは、私にとって最上級。そして、似たような触り心地でも、それが偽物なのか本物なのか、化学繊維か天然かは手のひらが勝手に悟ると思っている。
最近、コスメでそんな体験をしたのが、“Itoguchi”の「みどりまゆBODY&HAIRモイストシャンプー」を使った瞬間。正直、驚いた。洗い始めの塗布した瞬間から、トゥルントゥルントゥルン〜と、まるで“玉の肌”みたいになる感覚。シルクのヴェールに包まれるってこういうこと! と使いながら実感して、虜になってしまった。シャンプーそのものの触り心地も良く、洗っているうちに、自分がその触り心地になっている。今から「私がシルク」、みたいなつるつる感。シルクをうたうさまざまなアイテムを使ったことがあるけれど、正直、ここまでの感動は初めてだった。ボディだけでなく、ヘアにも満足度が高くて毎日使いたくなってしまう。ワクワクして全アイテムを使ってみたら、化粧水もクリームもマスクも、全部良かった。「みどりまゆスキンプロテクトクリーム」も良すぎて、あかぎれなどに困っている母にもプレゼントしてみたら、いつのまにか机の上に常備されている。母はコスメにミーハーではないが、いつも本質的に良いものを勝手に選んでいる。いらないものはいつのまにかしまいこまれてしまうので、実はこれは結構珍しいことで、こういうことが起こるたびに、人間、頭でっかちに、コスメ情報を仕入れていなくても、良いものは本能的にわかるし自然に伝わるんだなあ、と実感するのだ。
そんなふうに私が夢中になっている“Itoguchi”の本社“きものブレイン”に、先日取材に行く機会をいただいた。場所は、新潟県十日町。3月のある日はまだ雪が多く残り、遠くに山々をたずさえながらのどかな田園風景が広がる、心やすらぐ風景の中に、その“手触りの良さ”を生み出してくれる特別な蚕がいた。世界でもここだけで、無菌室で大切に育てられている“みどりまゆ”。黄緑色を帯びた繭からとれる、NMFと類似したセリシンを他の蚕よりもたっぷり含み、絹糸の成分であるフィブロイン 、蚕の黄緑色を織りなすUVシェルター効果も持つフラボノイドと、肌の美しさを引き出す3大成分を、コスト度外視で必要なだけ入れてコスメを作っている。製糸後に残った成分のアップサイクル原料としてセリシンを使うことはよくあるけれど、こちらは絹糸そのものも入っていることになる。その贅沢さに、触れるだけで伝わる質の高さの理由はここにあったんだ、と改めて感心する。
さらに、2月には、“Itoguchi”の養蚕が、オーガニック認証機関であるECOCERT(エコサート)によってUSDA(米国農務省 United States Department of Agriclture)が定める有機認証プログラム“NOP認証”を取得。養蚕でオーガニック認定とは世界でもほとんど例のないこと 、しかも特に厳しいと言われているエコサートで、必要なポジティブリストの条件を揃えるために、2年以上の歳月をかけて、その唯一無二性を証明した。例えば、蚕が食べる人工飼料の主成分となる桑葉は、桑畑 までオーガニックでなければいけなかったり、生産行程はなるべくゴミを出さない 、動物を殺してはいけないなど厳しいルールがある。通常の養蚕では、絹糸を取る際に蚕を丸ごと茹でるのが原則なので、蚕は中で死んでしまっているそう。でも、こちらでは、繭をオリジナルに斜めに小さくフタ部分をカットすることで、中の蚕は生きたまま、繭を収穫することが可能に。これから徐々に、全アイテムが中身もパッケージもコスモスオーガニックの認証マークのついたさらに良いものへと変わっていくそう。いいものをただ濃厚に入れているだけではない、肌に良い成分をどっさり、でも使い心地や効果のバランスは担保して、その行程まで最大の気遣いがある…それが“Itoguchi”を使うと伝わってくるまろやかさ? 丸み?につながっている気がしている。いつでも、ユーザーのことをいちばんに考えている開発者とスタッフの方々のたゆまぬ努力で、“Itoguchi”は進化し続ける。“きものブレイン”は、養蚕工場も、そして大元の着物のアフターケアサービスの会社も、働いている方たちの礼儀正しさ、謙虚さ、実直さ、丁寧さ、技術の高さがとても印象的だった。
取材時に私が、「みどりまゆBODY&HAIRモイストシャンプー」でシルクの良い感触に包まれる瞬間が心地よくて本当にうれしい! と研究者の方にお伝えしたら、自分だけではなく、周りを包む服やリネンや、お好きなものを“まるでシルク”にできる画期的なアイテムがありますよ! と教えてくださった。同じ“きものブレイン”が持つ姉妹ブランド“絹生活研究所”の「ulfada(ウルファーダ)」だ。衣類のシルクトリートメントと題するこちらは、洗濯機で柔軟剤代わりに、またはつけおきかスプレーでシュシュっとするだけで、ふきかけたものを“みどりまゆ”のシルク成分で包み込む。つまり、コットンのTシャツも、麻の枕カバーも、見た目はそのまま、表面はシルクになるということ。どんなものでも触り心地が良く、さらに肌にもたらす効果もシルクになるなんて! 髪と全身をこのシャンプーで洗った後、シルクトリートメントした服を着たり、ベッドリネンに包まれて寝たら最高じゃないか。肌触りフェチ冥利に尽きる。しかも、保湿効果など、肌にもたらしてくれる美容メリットも大きい。ちなみに、英語で、心からじんと感動した、というときに“I’m touched.”と言う。Touchはもちろん、=“触れる”という意味で、心に触れられるほど感動したということ。Touched by its touch .感動級の肌触りになるべく多く触れながら、人生を過ごしたい。
ビューティーエディター/ライター
中尾のぞみ
雑誌好きが高じて、大学卒業と同時に編集・ライター業に携わる。
美容誌『美的』や『美的GRAND』を始め、ファッション誌やweb記事、リリース及びブランドブック制作やコピーライティングなど、フリーランスで活動中。美容全般・健康を中心に、旅・香り・食・アート・海外・アウトドアなど、美しいこと・美味しいこと・楽しいことについて、物事の本質を捉え、伝えたいというのが原動力。2025年、耳つぼセラピスト資格を取得。