【シルクとわたし】第六章 伝統を守る心、人を美しく幸せにする製品 エディター/コピーライター 大塚真里
とっておきの1着はクリーニングに出して、お気に入りだからこそたくさん、長く着る。洋服においてはあたり前の考え方ですが、ほんの40〜50年前まで、和装においてその考え方はほぼなかったそうです。1980年、きもの離れを食い止め日常的に楽しむ人を増やすべく、業界初の「きものアフターケア」をスタートしたのが、新潟県十日町市で呉服卸売業を営んでいた、きものブレイン。ブレない芯をもって、きものクリーニングやシミ抜きなどのサービスを開発し続け、今ではきものを大切にケアして長く着ることはごく一般的になりました。
さまざまな学びが詰まったストーリーだなと思います。一見利益と相反すること(新しい着物が売れなくなってしまう)であったとしても、お客様目線のサービスは必ず成功につながること。新しい視点と早く動くことの大切さ。ものを大切にする精神が作り出す明るい未来…。
そんな企業が、過疎化が進む十日町市で働く若い従業員の未来を明るいものにすべく始めたのが、日本で廃れつつある養蚕事業。緑繭(りょっけん)という、淡い黄緑色の糸を作る希少種を、病気を防ぐ無菌人口餌で育成。希少な国産の繭から抽出したシルク成分をたっぷり使って作られるのが、化粧品ブランドの「Itoguchi」や、衣類へのシルク付与剤など、QOLを上げるさまざまな製品です。
私がItoguchiに触れたきっかけは、こんなストーリーや企業の思いはつゆ知らず、ただ美容エディター界隈で「めちゃくちゃいい全身シャンプーがある」という評判を聞いたから。いつもなら髪と体は当然別々のもので洗い、ヘアサロン専売のシャンプーしか使わないなどこだわりが激しい面々が、口々に「Itoguchi使った?」と勧めてくる。これは何かあるのだと思い試してみると、みんなの興奮がすぐにわかりました。
「みどりまゆ BODY&HAIRモイストシャンプー」。たっぷりとクリーミィな泡立ちで心地よく、髪への指通りもよく洗えます。そして驚いたのは、すすぎのとき。シルクの成分が吸いつくことにより肌や髪の手触りがすべすべしっとりとして、初めての感触。しっとりタイプの洗浄料にありがちな、ぬるっとオイルが残る感覚は苦手なのですが、シルクのすべすべ感は大歓迎です。さらに、お風呂上がりはボディローションが不要なほどに、乾かない。髪はもちろん頭皮にも良さそう。1ステップで頭のてっぺんからつま先、デリケートゾーンまで全身洗えて、忙しいときはボディや頭皮の保湿も省いてOK! 時短になるだけでなく、慌ただしいときの心まで楽にしてくれる、これぞまさにお守り美容です。
全身シャンプーに魅せられて、スキンケアシリーズを使ってみたら、これまたテクスチャーも肌がすこやかに整っていく感覚も素晴らしくて。シルクの秘密を知りたいと思い十日町市を取材で訪ね、冒頭のエピソードを知りました。アメリカ暮らしが長いすべてが西洋式の家庭で育ったため、和装に縁がなく、恥ずかしながらきものの高級素材が絹(シルク)であることもこの取材で初めて知りました。日本のきもの文化を守りたいという思いと、シルクを纏って肌や髪を美しくすることは、つながっていた。背景を知ることで、Itoguchiの製品はますます特別なものになりました。
最近は「みどりまゆ シルキーHAIRミルク」を使っています。みずみずしくとろけてなじみ〝髪そのものになる〟ような感覚は、髪の構成要素に似たシルク配合のおかげ。心地良さの中にひと癖の余韻を残す精油の香りも、作り手のセンスを感じられ、使うたびに十日町市で出会った情熱的な人々の顔が思い浮かびます。
大塚真里
エディター/コピーライター
ビューティ誌と生活情報誌の編集部勤務を経て独立。現在は女性誌のビューティページの編集・執筆と、コスメブランドのブランディング・コピーライティングとの2軸で活動。人の心に自信とハッピーをもたらす美容の世界に魅せられ、本質的かつ時代に即した提案を常にできる自分であるために、学びを続ける日々。